脱ロシアのためにも再エネ出力制御の解消を加速すべき

LNGの調達リスクが顕在化しているようです。

日本経済新聞(2022/3/3)
商社や電力、LNG調達に奔走 輸入量8%がロシア産

ロシアによるウクライナ侵攻を機に、日本企業が液化天然ガス(LNG)の調達を維持しようと代替策を模索している。輸入量の約1割を占めるロシア産の調達が滞ることを想定し、他国に販売するLNGの一部を日本に回せるか検討する。LNGは気化しやすく在庫を積み増すのは難しい。リスク回避へ先手を打ち、供給網の綻びを防ぐ。


都市ガス事業の現状2021-2022

2020年度の実績では、日本がロシアから輸入しているLNGは約640万トン(LNG全体の8%)です。
また、LNG全体の65%が発電に使われています。

脱ロシアだけでなく、脱炭素や調達リスク、価格高騰リスクなどの観点からも、LNGを含めた化石燃料への依存度を減らすことは、日本にとって喫緊の課題です。

原発再稼働の議論もあるようですが、原発は安全保障上の弱点になることが、ロシアのウクライナ侵攻によって証明されてしまいました。
使用済み核燃料の問題も解決の見込みがありません。

やはり、再エネを徹底的に増やしていく必要があるでしょう。

また、既存の再エネを十分活用できるようにすることも重要だと思います。
特に九州電力では、再エネの出力制御が常態化しています。

西日本新聞(2021/7/11)
生かし切れない再生エネ、「出力制御」いつ解消? 方法は、課題は

政府が再生可能エネルギーの拡大を目指す中、九州では太陽光や風力の発電を一時的に停止する「出力制御」が頻発している。
2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロに向け、経済産業省は地域間の送電網を増強して九州外の地域への送電量を増やす方針を打ち出す。ただ、最短でも10年程度の事業期間や巨額の費用など課題が多い。

九州電力は2018年10月に全国で初めて出力制御を実施し、20年度末までに計160回に上る。

今年も春になって九州電力は連日出力制御を実施しています。


九州電力 再生可能エネルギー出力制御見通し

日中の数時間だと思いますが、連日100~200万kW程度が出力制御(発電量が低減)されています。

また、2022年度の年間の制御量の見込みは、7.3億kWhです。


第36回系統WGプレゼン資料(九州電力2022/3/14)

一方、LNGタンカー一隻(約9万トン)分のLNGで発電できる電力量は、約6億kWhだそうです。(260kWh×240万軒=6.24億kWh)

(参考)関西電力 火力発電の燃料

LNG船一隻(約9万t)から、約240万軒/月の電力をまかなうことが可能です。
(月間電力使用量を260kWh/軒と想定した場合)

つまり、九州電力の再エネ出力制御を解消できれば、タンカー一隻分以上のLNGを節約できることになります。

実に、もったいない状態です。

 
再エネの出力制御を解消するために重要なのは、送電と蓄電だと思います。

現状、九州から本州への送電線の容量は247万kWです。


電力広域的運営推進機関

西日本新聞(2021/7/11)

全国の電力供給システムを調整する国の認可法人「電力広域的運営推進機関(広域機関)」は5月、九州と中国をつなぐ「関門連系線」など4カ所の増強案を示した。関門連系線の送電線を1回線から3回線に増やし、容量を現在の2倍の556万キロワットまで拡大する考えだ。

もっとも、事業期間は流動的だ。工事計画を策定するのは22年度以降になる見通しで、工事が終わるまでには10~20年かかる可能性があるという。

もっと早くできないのでしょうか。
送電網を強化することは、防災上やエネルギー安全保障上も重要だと思います。

大型蓄電池に関するニュースも増えてきました。

スマートジャパン(2022/2/16)
テスラの大型蓄電池「Megapack」を採用、ミツウロコが北海道に「蓄電所」を建設

ミツウロコグリーンエネルギーは2022年2月9日、北海道広島市に系統用蓄電所の建設を開始したと発表した。2022年12月の運用開始を目指す。この蓄電システムを活用し、需給調整市場や容量市場などにする計画だ。
今回建設する系統用蓄電所「北広島第一、第二蓄電所」には、米テスラ社製大型蓄電システム「Megapack(メガパック)」を採用した。導入したMegapackシステムの出力は3085.6kW、蓄電容量は1万2192kWh。

このような蓄電所が各地に設置されていくと、再エネの出力制御を削減できるだけでなく、災害や有事の時にも活用できそうです。

また、電気自動車を系統の安定化に活用する実験も行われているようです。

東京電力(2020/8/6)
電気自動車をバーチャルパワープラントのリソースとして活用するV2Gビジネス実証事業の試験運転開始について

本実証事業では、EV/PHEVをVPPのリソースとして活用することで、継続的な再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の導入と電力系統安定化の両立を目指します。2021年度以降には、電力系統とEV/PHEVの蓄電池との双方向間で電力需給調整を行うV2G事業のビジネスモデルを構築し、事業化を検討してまいります。

VPPでなくても、再エネの発電量が多い時間に電気代を少し安くするだけでも、出力制御を減らせそうです。

日本経済新聞(2021/9/27)
電気料金、昼に安く 太陽光活用へ変動制義務化案

太陽光発電などの再生可能エネルギーの電気の有効活用に向け、昼間に安い料金プランを消費者が選びやすくなる見通しだ。経済産業省は太陽光の発電量が多くて電気が余りがちな昼間に安く、需給が厳しい時に高くなるプランの設定を事業者に義務付ける検討に入った。

スマートメーターは30分毎の電力量が分かるので、その単位で電気代を変えるのは、それほど難しくなさそうな気がしますが、どうでしょう?

いずれにせよ、再エネの電力をわざわざ減らして、化石燃料の消費を増やすような出力制御は、早く解消すべきだと思います。