日本の原油の中東依存度は95%

政府は具体的な対策をしているのでしょうか?

NHK 解説委員室(2023/10/19)
オイルショックから50年 再来するエネルギー危機

中東では、今、イスラエルとパレスチナのイスラム組織「ハマス」との間で、大規模な軍事衝突が起きています。今からちょうど50年前も、中東で大きな戦争が起きました。原油価格が跳ね上がり、日本は、「オイルショック=石油危機」に見舞われ、中東外交とエネルギー政策の根本的な見直しを迫られました。

「石油の供給源を中東以外の地域にも求めなければいけないということで、当時の田中角栄首相が、資源外交ということで、アフリカ大陸以外の産油国を全部回りまして、日本への安定供給の要請をして回りました。国内的には石油に代わる新しいエネルギー源を考えなければいけないということで、1つは再生エネルギー。もう1つは原子力発電ということで、対策を講じてきたわけです」。


 
この間、政府は、石油を確保し、国民生活を安定させるための法律を新たにつくり、省エネと、石油の備蓄を徹底的に進めました。さらに、将来を見据えて、天然ガスや原子力などエネルギーの多様化を図り、合わせて、原油の調達先が中東に偏りすぎないよう分散化を図りました。オイルショックが起きた際、およそ78%だった中東への依存率は、87年には、およそ68%まで下がりました。


 
日本にとって、エネルギーを中東・ペルシャ湾岸地域に過度に依存することは、非常にリスクが大きいと言わざるを得ません。この地域は、軍事的緊張にさらされる危険性が潜在的に大きいからです。
現在、イスラエルとハマスとの間で起きている軍事衝突では、アラブの産油国に、原油輸出を制限する動きは見られず、新たな石油危機は起きないだろうと言う見方が支配的です。今後、仮に、ハマスを支援するイランを巻き込む大きな地域紛争に発展した場合には、話はまったく変わります。ペルシャ湾岸からエネルギーが来なくなって、経済と暮らしに計り知れない影響が出ることになります。

 
日本の化石燃料の輸入先を見ると、原油が極端に中東に依存していることが分かります。


資源エネルギー庁 2022-日本が抱えているエネルギー問題


今日の石油産業2023

日本の石油製品の需要の上位3つは、ガソリン、ナフサ、軽油です。


今日の石油産業2023

ガソリンと軽油の大部分は、輸送機関の燃料として使われているようです。
ナフサはプラスチック製品や様々な石油化学製品で使われています。

もし、中東から日本に原油が入ってこない状態が何カ月も続いたら、交通や物流関係が大打撃を受けて、様々な物価の高騰や物不足が起きることは避けられないでしょう。
 

今日の石油産業2023

石油のシーレーン
日本は原油の約9割を中東地域から輸入しています。中東から日本までの航路は約1.2万kmあり、主にペルシア湾内で原油を積載し出港したタンカーは、ホルムズ海峡、東南アジアのマラッカ・シンガポール海峡を航行し、約3週間かけて日本に到着します。

 
ホルムズ海峡とその周辺では、これまでも多くの事案が発生しています。


資源エネルギー庁 令和5年度から令和9年度までの石油・LP ガス備蓄目標(案)について

今年になってからもこんな報道がありました。

CNN.co.jp (2023/7/18)
米軍、駆逐艦と戦闘機の中東派遣を命令 イランの活動に対応

米国防総省の報道官は17日、オースティン米国防長官が新たに駆逐艦と戦闘機を中東へ派遣するよう指示したと発表した。
ホルムズ海峡で最近、不穏な動きが相次いでいることを受け、米国の利益と航行の自由を守るために、ミサイル駆逐艦トーマス・ハドナーとF35、F16戦闘機を米中央軍司令部の管轄区域に展開する。
ホルムズ海峡とオマーン湾では5日、イラン軍の艦艇が商用船の拿捕(だほ)を図った例が2件相次いだ。

産経新聞(2023/9/29)
イラン艦が米機にレーザー ペルシャ湾で危険行為

米海軍は28日、イラン革命防衛隊の艦艇がペルシャ湾で27日に米海兵隊のAH1攻撃ヘリコプターにレーザーを照射するなど繰り返し危険な行為をしたと発表した。

そして、今回のイスラエル有事です。

BBC (2023/10/23)
イランがイスラエルに警告、ガザ攻撃続ければ中東は「制御不能に」 ネタニヤフ首相は部隊を視察

イランのアブドラヒアン外相は、イスラエルに警告を発するとともに、軍事支援を行っているアメリカにも「責任がある」と述べた。
アブドラヒアン氏は首都テヘランでの記者会見で、「アメリカとその代理国であるイスラエルが、ガザ地区での人道に対する犯罪行為とジェノサイド(集団虐殺)を即座に停止しなければ、いつ何が起きてもおかしくなく、この地域が制御不能に陥るだろうということを、警告しておく」と述べた。
そして、こうした攻撃の結果は地域にとっても、戦闘を擁護する者にとっても「深刻で悲惨な」ものとなり、「広範囲に及ぶ影響」をもたらす可能性があるとした。

米政府高官もまた、紛争が拡大する可能性があると警鐘を鳴らしている。
ロイド・オースティン米国防長官は、米軍や米国民に対する「攻撃が著しくエスカレートする」可能性があるとしている。
「もしどこかの集団あるいは国が、この紛争を拡大させ、この非常に不幸な状況を利用しようとしているのなら(中略)『やめておけ』と我々は忠告しておく」と、米ABCの番組「This Week」で語った。

事態がエスカレートしないことを願うばかりです・・