能登半島地震、避難所はデジタル管理・監視社会の実験場
避難者の個人情報は外資系企業のシステムに集約されるようです。
ITmediaNEWS(2024/1/26)能登半島地震の避難所に“Suica”配布 マイナカード活用は断念 河野大臣「リーダー確保できず」
Impress ケータイWatch (2024/1/26)デジタル庁は1月26日、令和6年能登半島地震の避難者情報の把握のため、Suicaを利用すると発表した。避難者にSuicaを配布し、名前や住所、連絡先などの情報をひも付けすることで、その居場所や行動を把握する仕組み。
能登半島地震の被災者たちは現在、1次避難所から2次避難所やそれ以外の場所などに移動する機会が増えており、その居場所や各避難所の利用状況の把握が難しくなっている。
この課題を解決するためデジタル庁と防災DX官民共創協議会は、JR東日本に協力を要請。JR東日本はSuicaカード約1万8000枚とリーダー約350台の無償提供を決めたという。
河野大臣は以前「今後は災害の際にもマイナンバーカードを避難所で活用できるようにしたい」と考えを示していた。今回Suicaの利用を決めた理由については「本来はマイナンバーカードでやるべきことだが、残念ながらカードリーダー(NFCのType-B対応のもの)を準備できなかった。そのため、今回はJR東日本の協力を得て、Suicaでのシステム構築を決めた」と説明している。
能登半島地震の避難所利用者に「Suica」配布、利用状況やニーズ把握
取り組みの概要は、受入体制の整った一次避難所の利用者にSuicaを配布し、Suica受取時に利用者の名前と連絡先などを登録する。避難所の利用時に避難所に設置したリーダーにSuicaをかざすことで、避難所の利用状況を把握し、データを石川県庁に集約する。
大臣会見によると、夜間に一次避難所に滞在する被災者は約1万人だが、夜は自宅で過ごしたり、親戚や知人宅に身を寄せたりする被災者もいるため、支援を要する対象者がどの避難所にどのぐらい居るのかを把握するために、こうした仕組みが必要となる。
一次避難所に設置したリーダーにSuicaをかざすだけでは、
「夜は自宅で過ごしたり、親戚や知人宅に身を寄せたりする被災者」が、
いつ、どういう支援を必要としているかまでは分からないような気がします。
おそらく、この取り組みも誰かが思いついて、急遽始めることにしたのではないでしょうか。
気になったのは、1次避難所の避難者だけでなく、他の避難所や避難所以外の避難者も、個人情報が外資系企業のシステムに集約されることです。
日経XTECH(2024/1/26)能登半島地震で石川県が避難者情報の把握にSuicaを活用へ、JR東などが協力
Suicaの利用履歴データをひも付けた避難者情報は、石川県庁に構築する新システムに集約する。SOMPOホールディングスの協力のもと同社と米Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)の合弁会社であるPalantir Technologies Japanがシステム開発を担当。複数のシステムに散在するデータを統合することに強みを持つパランティア・テクノロジーズのデータ統合・分析システムである「Foundry(ファウンドリー)」を活用する。
Suicaを活用する1次避難所だけでなく、市町や県の職員などがそれぞれデータ収集をしている1.5次避難所や2次避難所の避難者情報に加え、避難所以外で避難生活を送る域外避難者情報もFoundryに集約する。域外避難者については、2024年1月22日から石川県がLINEやコールセンターを使って避難者情報の把握を進めている。今後、避難者情報とニーズを正確に把握した上で、要請に基づいて物資を避難所に届ける「プル型」の物資支援を進める計画だ。
防災DX官民共創協議会の江口清貴専務理事は「被災者への的確な支援につなげるためには、行政機関の間で避難者の状況を共有し、把握する必要がある」とFoundryへの情報集約の背景を説明する。江口専務理事は神奈川県の情報統括責任者(CIO)兼データ統括責任者(CDO)を務め、同県で県内市町村と協力して防災情報連携基盤としてFoundryを活用してきた。
支援を効率的・効果的に行うためには、自治体が避難者の状況を把握する必要があるというのは、ある程度は分かりますが、どこまで個人のプライバシーに踏み込むのかや、その場合の個人情報の管理はどうなっているのかが気になります。
特に、パランティア・テクノロジーズのFoundryという、1つの外資系企業のシステムに依存したやり方はどうなのでしょう?
政府系システムの「ガバメントクラウド」は9割がAWSというのも議論になっていますが、政府・デジタル庁の外資系企業依存体質が気になります。
日経XTECH(2023/11/28)ガバメントクラウドに国産採択も利用進まない懸念、ロックイン回避が課題に
ガバメントクラウドの整備初年度に当たる2021年秋に採択された「Amazon Web Services(AWS)」が、現状では各府省庁と自治体の利用で9割以上を占めている。クラウドロックインを回避し、他のクラウドサービスの利用を進めたり移行をスムーズにしたりすることが今後の課題となる。
今回の石川県の避難者情報集約システムは、今後を見据えた実験的な意味合いが強いと思います。
政府は民間企業ではないので、目先の効率性だけでなく、長期的な国益や安全保障を考えて進める必要があるのではないでしょうか。
ちなみに、パランティア・デクノロジーズに関して、こんな記事がありました。
「デジタル庁」発足で、いよいよ日本にくる「黒船」のヤバすぎる実力
パランティア・テクノロジーズ(以下、パランティア)。アメリカをはじめ世界の官公庁を次々と顧客に取り込んでおり、日本政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)にも影響を与えそうな業務を遂行している。
彼らの最初の顧客は、世界最大の諜報機関であるCIA(米中央情報局)とされている。
米同時多発テロをきっかけに創業されたパランティアは、「カウンターテロリズム」に力を発揮してきた。CIAが収集したテロにつながるビッグデータを同社のソフトウェアが解析し、人と人の関係、カネの流れと組織の状態をつぶさに紐解いて、最適解を導き出す。
オバマ大統領時代の2011年、「9. 11」の首謀者オサマビンラディンが殺害されたこともパランティアの情報解析技術の実績だとされている。2011年にはCIAが設立したVCの「In-Q-Tel」が出資。報道によれば、近年、ペンタゴン(米国防省)、海兵隊などと契約するなど、軍事・諜報機関に同社のソフトウェアが次々に装備されたという。(途中略)
日本でもDXの進展で、たとえば、国民健康保険中央会や厚労省のマイナポータルの基幹システムに集約される医療データや、国税庁や年金機構に集約されている納税および年金記録のデータ、また警察庁に集約されているはずの運転免許や交通履歴などのビッグデータが、パランティアのようなソフトを使って解析される日が来ることになるだろう。
それは、つまり日本政府が国民監視のツールを得るということ。政府のデジタルシフトは必要だが、それは国民に甘い汁だけを提供するとは限らない。
日本はDXという大義名分の元、着々とデジタル管理・監視社会に向かっているようです・・