トランプ前大統領暗殺未遂事件(その11)

銃声のエコーの時間が異なる点に関して、少し検討してみました。

トランプ前大統領暗殺未遂事件(その9) で指摘した、“On Stage"のエコーの時間が1,2,8発目と3~7発目で異なる件です。


 

 
位置が固定されていると思われるマイクで記録されたにもかかわらず、その銃声のエコーの時間が最大約9ミリ秒違っています。

9ミリ秒は音が約3メートル進む時間です。

もし、1,2,8発目(A,B,H)と3~7発目(C-G)で、発砲した場所や方向が違っていたら、エコーの時間が変わる可能性がありますが、今のところ、それを裏付ける証拠はないと思います。

 
そこで、同じ場所から発砲した場合でも、エコーの時間に違いが出る可能性として、風の影響を考えてみました。

トランプ氏が銃撃された時刻は、2024/7/13 18:11ですが、その時ピッツバーグでは、時速7kmから9kmの北風が吹いていたようです。


time and date

この写真の星条旗も、風でなびいているように見えます。


AP

北風ということは、トランプ氏を狙った銃弾とほぼ同じ方向に風が吹いていたことになります。

計算すると、時速8kmの追い風がある時は、ない時よりエコーの時間が約3.6ミリ秒早くなることが分かりました。

<計算方法>
気温32℃の時の音速は、
331.45 + 0.6*32 = 350.65(m/sec)
銃声の直接音とエコーの時間差を0.212秒をすると、その時間の音の伝搬距離は、
350.65 * 0.212 = 74.34m
銃撃犯が発砲した位置からステージのマイクまでの距離を130メートルとすると、エコーの伝搬距離は、
130 + 74.34 = 204.34m
風速0m/sの時に、銃声のエコーがマイクに届く時間は、
204.34 / 350.65 = 0.5827sec
風速8km/hの追い風の時に、銃声のエコーがマイクに届く時間は、
204.34 / (350.65+8000/3600) = 204.34 / 352.87 = 0.5791sec
風速0m/sの時と、風速8km/hの時の、エコーの時間差は、
0.5827 - 0.5791 = 0.0036sec

 
一方、風が吹いている場合は、音波が屈折して伝わる可能性があります。

ScienceABC
Does The Speed Of Wind Affect How Fast Sound Waves Travel Through It?

音波の屈折
一般的に、地球の表面近くでは障害物(木、建物、山など)があるため風速は遅く、地表から高いところに行くほど風速は速くなります。高所と低所での風速の差により、速度勾配が生じます。この勾配は、それぞれのレベルでの音速に影響を及ぼします。


 
音波が風の方向に伝わる場合、風速の差により、波面の上半分は下半分よりも速く移動します。長距離では、波面の上部と下部の位置の差は指数関数的に増加します。最終的に、音波は方向を変えざるを得なくなり、地面に向かって下向きに屈折します。

風の中を通ってきた音は、屈折によって、伝搬距離が無風の時より長くなることが考えられます。

風が吹いている場合は、追い風で速度が上がる影響と、屈折で伝搬距離が長くなる影響の両方がありそうです。

屈折の影響を具体的に計算するのは困難ですが、追い風の影響よりも大きそうな感じもします。
例えば、伝搬距離が1m長くなると、伝搬時間は約3ミリ秒長くなります。

 
以上のことを考えると、9ミリ秒程度のエコーの時間差は、風の影響によるバラツキと考えてもよさそうな気がします。

ということで、とりあえず、銃声リストは以下のように更新しておくことにします。