新型コロナ、デルタ株はアジア人に危険なのか?
日本でもデルタ株の感染が拡大中のようですが、とりあえず警戒したほうがよさそうな気がします。
以下は今年3月以降の各国の新型コロナの感染者数(上のグラフ)と死者数(下のグラフ)の推移です。
上の感染者数のグラフは、日本とインド以外は最近感染者数が増加している国です。
これらの国は、おそらくデルタ株の感染が拡大していると思われます。
インドは4月から5月にかけて感染者が爆発的に増加しました。
一方、下の死者数のグラフを見ると、最近増加しているのはロシアとマレーシア、インドネシアで、イギリスとポルトガル、イスラエルはあまり増加していません。
インドはようやく減少してきましたが、4月から6月にかけて大変な状況でした。
イギリス、ポルトガル、イスラエルは感染者が増えているにも関わらず、死者数が増えていないのは、ワクチン効果のような気もしてきますが、先日のブログ で参照したイギリスの公衆衛生当局の報告書 によると、そうでもなさそうです。
英国のデルタ株の状況(2021/2/1~6/21)
ワクチン2回接種して
感染した人=7235人
死亡した人=50人
死亡率=0.69%
ワクチン未接種で
感染した人=53822人
死亡した人=44人
死亡率=0.08%
この数字を見る限り、イギリスの死者数が少ないのは、ワクチンは関係なさそうです。
(ワクチンによって感染後の致死率が上昇している可能性はある)
アジアの各国で感染者の増加と共に死者数が増えているのは、これの影響ではないでしょうか?
東京大学医科学研究所プレスリリース
ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れる SARS-CoV-2変異の発見
東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授が主宰する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は、新型コロナウイルスの「懸念すべき変異株」である「カリフォルニア株(B.1.427/429系統)」と「インド株(B.1.617系統;デルタ型)」に共通するスパイクタンパク質の「L452R変異」が、HLA-A24を介した細胞性免疫からの逃避に関わることを明らかにしました。また、「L452R変異」は、ウイルスの感染力を増強する効果もあることを明らかにしました。
L452R変異は、現在世界中で流行拡大しているインド株に特徴的な変異です。また、L452R変異による免疫逃避に関わる、細胞性免疫を担うHLA-A24というタイプの白血球抗原は、約60%の日本人が持っています。L452R変異は、日本人に多いHLA-A24による細胞免疫から逃避するだけでなく、ウイルスの感染力を増強しうる変異であることから、この変異を持つインド株は、日本人あるいは日本社会にとって、他の変異株よりも危険な変異株である可能性が示唆されます。
東京新聞(2021/5/1)
インド変異株の発現は「アジア人の免疫から逃れるため」? 日本人6割で免疫低下か
「HLA―A24は東アジア人に多く、カリフォルニア州は米国で最もアジア人が多い。L452R変異はアジア人の免疫から逃れるために発現したとも仮定できる」
デルタ株=L452R変異=HLA-A24の細胞性免疫から逃避=アジア人に感染しやすい
デルタ株は欧米人にはあまり脅威ではなく、アジア人に危険なウイルスかもしれません。
ワクチンの効果も気になります。
読売新聞(2021/7/2)
ワクチン接種、インド型変異ウイルスにも一定効果…研究機関など報告相次ぐ
モデルナは先月29日、同社のワクチンを2回接種した8人の血液を調べた結果、インド型に対する抗体の量は従来型の約2分の1だが、感染や発症を抑制する効果は十分にあると発表した。
英エディンバラ大などの調査によると、ファイザー製ワクチンのインド型に対する感染予防効果は約79%、英アストラゼネカ製では約60%だった。英国の公衆衛生当局は、重症化などによる入院をいずれも90%超減らすことができたと推定した。
ということですが、
モデルナの調査
はイギリスと南アフリカの人の中和抗体(液性免疫)を調べたもの
エディンバラ大学の調査
はスコットランドの症例を分析したもの
で、アジア人に対するワクチンの有効性の調査ではありません。
アジア人のデルタ株に対するワクチンの効果を早急に確認する必要がありそうです。
欧米のデータだけ見ていると、大きな間違いをしてしまうかもしれません。
とりあえず、デルタ株は要注意だと思います。