製薬業界に近いアメリカの公的機関

これらの公的機関が出すメッセージは、製薬業界の影響をかなり受けていると思った方がよさそうです。


FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)

アメリカ合衆国保険福祉省(HHS)の下に位置する機関で、食品の安全や医薬品に関する規制当局です。

新薬の承認を行う機関なので、製薬企業とはかなり密な関係になると思われます。

また、政府の機関ですが、予算の半分近くは製薬企業から出ているのが特徴です。

Fact Sheet: FDA at a Glance

2019年度のFDAの予算は59億ドルです。
FDAの予算の約55%、つまり32億ドルは連邦予算の承認によって支払われています。
残りの45%、つまり27億ドルは、業界のユーザー料金によって支払われます。

ここで「ユーザー料金」は"User Fee"という製薬企業が払う費用で、このような料金になっています。


FDA Prescription Drug User Fee Amendments

これは新薬の承認申請をする場合の料金で、臨床データが必要な場合の申請料は、今年度は約290万ドルです。
さらに、承認された薬の製品毎に支払う"Program Fee"があります。

薬の承認を多くやればやるほど、FDAの予算が増えることになります。
実際、新薬の承認は年々増えているようです。

THE CONVERSATION (2021/5/13)
Why is the FDA funded in part by the companies it regulates?

FDAによって初めて承認された標準的な新薬申請の数は2005年の38%から2018年には61%に増加しました。

医薬品の承認の数と速度は時間とともに増加していますが、FDAの承認後に深刻な安全性の問題が明らかになる医薬品の数も増えています。

早く承認を取りたい製薬会社と、予算を増やしたいFDA。
安全面が甘くなるのは自然の流れのような気がします。

担当している職員も、製薬企業の意向に沿った事をした方が、昇進や転職など、いろいろメリットがありそうです。

 

NIH(National Institutes of Health、アメリカ国立衛生研究所)

アメリカ合衆国保険福祉省(HHS)の下に位置する機関で、医学研究の機関です。
医学関係の研究を行うとともに、世界中の研究機関に助成金を出しています。

医学関係の研究所と製薬企業は切っても切れない関係なのは当然ですが、特に寄付金は重要です。

国立衛生研究所財団(FNIH)には、名だたる製薬企業から寄付が集まっているようです。


FNIH 2020 DONORS

こんなに寄付されたら、忖度しない訳にはいかないでしょう。
NIHから資金を受けている研究所なども同様だと思います。

 
ちなみに、今話題のFDAのツイート。


Twitter

わざわざこんなメッセージを出すとは、製薬業界から相当圧力を掛けられているのでしょうか。

FDAの職員も大変そうですね・・