ビッグ・ファーマ 製薬ビジネスの裏側
2020年11月に「BS世界のドキュメンタリー」で放送された番組ですが、先日再放送されていたので、録画して要点をまとめてみました。
BS世界のドキュメンタリー「ビッグ・ファーマ 製薬ビジネスの裏側」死に至る可能性のある深刻な病の治療薬を高額で売り、重大な副作用による被害も…「ビッグファーマ」と呼ばれる巨大製薬会社によるビジネスの実態に迫る調査報道番組。
発展途上国が必要とするマラリアやHIVの治療薬を50倍に値上げした製薬会社の元CEO。妊娠中の服用で胎児に先天性の精神障害や奇形を引き起こす可能性がある薬に対して対応を怠ったとされる製薬会社。新型コロナの治療薬をめぐる最新の動きも交えながら巨大製薬会社による利潤追求ビジネスの実態に迫る。 原題:BIG PHARMA Gaming the System (フランス 2020年)
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
ダラプリム
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
マラリアやHIVの治療に使用されている。
WHOが必須医薬品に指定。
医療分野に投資するヘッジファンドを経営していたマーティン・シュクレリは米国内の販売権を買い取り、1錠$13.5だった薬価を$750に値上げした。
下院委員会でシュクレリは証言を拒否し「アメリカで最も嫌われる男」と言われた。
デパキン
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
てんかんの治療薬。
製造はフランスのサノフィ。
妊娠中に服用すると赤ちゃんに重い障害が出る副作用がある。
発売後、ヨーロッパで数万人に障害が発生。
サノフィは開発時から副作用を把握していたが保険当局に全ての情報を伝えていなかった。
薬の箱に注意書きが記載されたのは、この薬が発売されてから50年後だった。
アバスチン
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
大腸がんの治療薬。
ジェネンテックが開発。
加齢黄斑変性の治療に劇的な効果があることが分かった。
1回分の費用は50ユーロほど。
一方、ジェネンテックは加齢黄斑変性の治療薬「ルセンティス」を開発していた。
中身はアバスチンとほとんど同じだが、これは1回1000ユーロ。
ヨーロッパでルセンティスを販売するのはスイスのノバルティス。
また、スイスのロシュはジェネンテックを買収してアバスチンを販売している。
アバスチンとルセンティスは効果が変わらないため、医師はアバスチンの方を主に使っていた。
するとロシュとノバルティスは加齢黄斑変性の治療にアバスチンを使わせないように訴訟を起こした。
訴訟は退けられたが、フランスでは保険の手続きが面倒になり、医師は加齢黄斑変性の治療にアバスチンを使うことを諦めるようになってしまった。
ソバルディ
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
C型肝炎の治療薬
開発したファーマセットを買収したギリアドサイエンシズが販売。
治療に必要な3ヶ月分で$84000(ヨーロッパでは42000ユーロ)。
ギリアドの売上高は$325億ドルに達し、利益率は55%だった。
批判を受けたギリアドはフランスでの販売価格を24000ユーロに引き下げた。
アメリカの製薬会社マイランがジェネリック品を出しているが、途上国でしか購入できない。
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
キムリア
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
白血病の遺伝子治療薬。
スイスのノバルティスが発売。
投与は1回で済むが薬価は32万ユーロ。
ペンシルベニア大が主体となり公的資金を受けて開発された。
批判を受けてノバルティスはフランス国内の薬価を約30万ユーロに下げた。
レムデシビル
BS世界のドキュメンタリー(2021/10/28)
エボラ出血熱の治療薬として開発された。
開発は10年前から行われており多額の公的資金が投入されている。
新型コロナの治療に使えそうだと分かったギリアドはFDAにオーファンドラッグの申請をした。
オーファンドラッグは患者数が少ない難病(20万人未満)の疾患に限定されている。
オーファンドラッグに指定されると市場独占、審査優先、販売認可が早く下りるといった利点のほか、税制上の優遇もある。
当時アメリカでは新型コロナの感染者が4万人ほどだったためオーファンドラッグに指定され、ギリアドは7年間の市場独占権を獲得した。
しかし、世界的なパンデミックの治療薬がオーファンドラッグに指定されたことは批判の的となった。
ギリアドは指定の取り消しを求めたが、FDAはレムデシビルの緊急使用を認めた。
ビッグファーマの実態がとてもよく分かる番組だと思います。
おそらく、同様の事は現在進行形でも行われているような気がします。