マイナンバーカードにフリガナ追加で全口座ひも付け決定か?

この流れでいくと、政府が勝手にひも付ける可能性もありそうな気がします。

ImpressWatch (2022/11/30)
マイナンバーカードに「フリガナ」 '23年法改正へ

マイナンバーカードに「フリガナ」
多くの人に直接的に関わるのは「マイナンバーカードの券面の一部見直し」だ。
2023年には、フリガナ(ひらがな、カタカナ)の個人氏名の表記を戸籍の記載事項とするよう戸籍法の改正が予定されている。これにあわせ、マイナンバーカードの氏名(漢字)の横にフリガナの付与を検討している


資料:マイナンバー法の改正事項について

このマイナンバーカードの氏名のフリガナ追加は、先日、可決・成立した改正マイナンバー法に含まれています。

日本経済新聞(2023/6/2)
健康保険証、24年秋に廃止 改正マイナンバー法が成立

行政のデジタル化を進めるための改正マイナンバー法が2日の参院本会議で可決、成立した。

 
同じ日に戸籍法の改正も可決・成立しました。

産経新聞(2023/6/2)
戸籍読み仮名、改正法成立 記載に一定基準 全国民が届け

戸籍にこれまで記載がなかった氏名の「読み仮名」を必須とする改正戸籍法などが2日、参院本会議で、自民、公明、日本維新の会、国民民主各党などの賛成多数で可決、成立した。令和6年度にも施行され、全国民が施行後1年以内に本籍地の市区町村に届ける必要がある。

記載は片仮名で、新生児らが初めて戸籍に載る際は併せて読み仮名を記す。その他は戸籍筆頭者が氏名、筆頭者以外が名前に関し届ける。市区町村は住民票などで既に把握している読み仮名を通知する。1年以内に届けがなければ職権で記載する。

新生児以外(すでに戸籍に記載されている人)は、特に届け出をしなければ、住民基本台帳などに登録されている氏名のフリガナが登録されることになるようです。

これらの法改正によって、全国民の戸籍に氏名のフリガナが記載されて、そのフリガナがマイナンバーとひも付いて、マイナンバーカードに記載されることになると思われます。

 
現在のマイナンバーカードにフリガナがない話は、公金受取口座の誤登録騒ぎでもクローズアップされました。

TBS NEWS DIG (2023/6/7)
「子どものマイナンバーに親の口座をひも付けはNG」給付金が受け取れない可能性も カギは“フリガナ”【ひるおび】


 
マイナンバーカードは氏名(漢字)・生年月日などを登録し、「フリガナ」の登録はありませんが、銀行口座の名義の照合は カタカナ”。
だから、ひも付けした「公金受け取り口座」と「マイナンバーカード」の照合は、システム上不可能なのです。

マイナンバーカードにフリガナ(カナ氏名)が追加されることで、公金受取口座の誤登録のようなミスをシステム的にチェックできるようになります。

それはそれで必要な対応かもしれませんが、おそらく、政府の1番の狙いはこれではないでしょうか。


 
マイナンバーと預貯金口座のそれぞれの「カナ氏名」と「生年月日」を突合させることで、全国の金融機関の大多数の預貯金口座に、マイナンバーを自動的にひも付けることが可能になります。

さらに「住所」に関しては、河野デジタル大臣がこのような発言をしています。

FNNプライムオンライン(2023/6/4)
マイナ保険証トラブル、河野大臣「AIでの再発防止」に言及

ただ、問題は住所が「港区赤坂一丁目2の3」と書く人もいれば、「港区赤坂1-2-3」と書く人もいる。「1-2-3」を半角で入れる人もいれば、全角で入れる人もいるし、ハイフンを「の」と入れる人もいる。将来的にはAIの技術を使って表記揺れを判断することがあり得るかもしれない。

いまデジタル庁でベース・レジストリ(公的基礎情報データベース)というのを作っている。住所表記はこれに合わせるルールを作ると同時に、多少表記揺れがあっても紐付けできることを目指している。

AIで住所も突合できるようになれば、全国の金融機関の預貯金口座とマイナンバーのひも付けを、かなりの確度で、ほぼ自動的にできる可能性があります。

旧姓や旧住所のまま放置してある口座はひも付けできない場合があるかもしれませんが、それにはこの制度が用意されています。

ITmediaNEWS(2023/4/25)
マイナカードで住所変更したら、銀行など金融機関にも一括反映  5月16日開始

マイナンバーカードの住所情報を変更すれば、その情報が金融機関などにも渡り、一括反映するサービスが5月16日に始まる。河野太郎デジタル相が4月25日の会見で発表した。
本人の同意に基づいて、マイナカードに登録した基本4情報と呼ばれる住所、氏名、生年月日、性別といった情報を民間企業に提供する。対象は銀行や証券、生命保険、損害保険を想定している。

「本人の同意に基づいて」となっていますが、これもいずれ実質義務化になる可能性は否定できないと思います。

 
先日成立した改正マイナンバー法で、「同意しない」という連絡をしない限り、
年金の口座を、政府が勝手にマイナンバーにひも付けることが決まりましたが、
同様に、
カナ氏名とAIを使って割り出した預貯金口座を、政府が勝手にマイナンバーに紐づける可能性もありそうです。

 
4月に鈴木財務大臣が「応能負担」について発言しましたが、フリガナ追加の法改正は、応能負担を実施するための準備の一環とも言えそうです。

ロイター(2023/4/26)
口座ひもづけ、国民に抵抗感あるのは事実=マイナンバーで財務相

応能負担は、所得など負担能力の違いによって税金や社会保険料の負担率が異なるという考え方。
鈴木財務相は、シニア層が不動産やさまざまな金融資産を保有しているケースがあることに言及し、「基本的に応能負担してもらうのは大切なことだ」と述べた。
マイナンバー活用による応能負担の推進について「その重要性や必要性を十分に示して、応能負担を進めていくことは重要なポイントだ」と語った。

おそらく最初は、年金世代を対象にして、介護や医療保険などの社会保険の負担率に、預貯金などの資産を反映させることから始めるのではないでしょうか。

その次は、年金の受給額そのものを預貯金額によって変えてくるかもしれません。
貯金があるなら、それを使え。ということです。

一通りの年金世代の応能負担が実現したら、次は現役世代でしょう。
現役世代も、預貯金などの資産によって、社会保険料が変わってくる可能性があります。
諸々の手当や控除も、資産によって変わってくるかもしれません。

社会保険の応能負担と平行して、預貯金自体に税金がかかるようになる可能性もあります。
いわゆる「貯蓄税」というものです。
利息分ではなく元本に税金がかかるので、預貯金をすぐに引き出すか使う必要があります。

ただし、貯蓄税が導入される時は、取り付け騒ぎを防ぐために、政府は同時に預金封鎖を実施する可能性もあるので要注意だと思います。

 
応能負担にしろ、貯蓄税にしろ、いつどうなるか、今はまだ分かりませんが、いずれにせよ、マイナンバーと全口座をひも付けて、政府が国民の資産を把握できるようにする方針は変わらないでしょう。

毎日新聞(2020/5/31)
政府、マイナンバー「全口座ひも付け」義務化検討 来年の法改正目指す

社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度について、政府は国民が開設する全ての預貯金口座情報とのひも付け(連結)を義務化する検討に入った。

実現すれば、政府は国民の資産状況を正確に把握することが可能となり、必要に応じて給付などに活用するほか、徴税の強化を図る方針だ。

これまで政府はいろいろやってきました。

2018年 預貯金口座付番制度開始
2020年 コロナ給付金にマイナンバーが使えない騒動
2021年 デジタル庁発足
2022年 公金受取口座登録制度開始、年金口座勝手に登録報道
2023年 マイナ関連トラブル騒動、改正マイナンバー法成立

政府はマイナンバーと全口座のひも付けを目指して、着々と進めているのが分かります。

 
ちなみに、改正マイナンバー法が参議院で可決される直前に、デジタル庁が公金受取口座の誤登録を発表したのは、実は周到に練られた作戦だったのかもしれません。

少なくとも担当レベルでは2月に把握していたようです。

日本経済新聞(2023/6/6)
マイナ公金口座の家族登録、デジタル庁「2月に把握」

河野太郎デジタル相は6日、マイナンバーと公的給付金の受取口座のひも付けで本人以外の家族名義の口座を登録する事例をデジタル庁が2月に把握していたと言及した。
「国税庁から還付金を振り込むときに本人名義でない口座が登録されているとの情報があった」と述べた。

5月23日にデジタル庁が誤登録を発表した後、フリガナの問題が報道されるようになりました。

NHK NEWS WEB (2023/5/26)
別人のマイナンバーに公金受取口座 誤登録防ぐ改修検討

所管するデジタル庁が調査した結果、マイナンバーには氏名のふりがなの登録がないことから、ふりがなが登録されている金融機関の口座とシステム上、照合ができないことが人為的なミスの防止につながらなかったと見ています。
マイナンバーへのふりがなの登録は、関連する法律を改正して登録できるよう今の国会で審議が行われています。

そして、改正マイナンバー法は、5月末の参議院の特別委員会で可決されて、6月2日の参議院本会議で可決・成立しました。

ちょっとタイミングが良すぎる気がするのは、私だけでしょうか・・