従来の保険証の問題はQRコードで9割解消できる

もうマイナ保険証は廃止した方がいいのではないでしょうか。

m3.com(2023/7/5)
新マイナカード「新しい読み取り機が必要になる可能性も」河野デジタル相

河野太郎・デジタル相は7月5日、衆院の閉会中審査で、2026年以降に順次切り替える新しいマイナンバーカードについて、「新しいカードの仕様がまだ決まっていないから何とも申し上げられないが、仕様によっては新しい読み取り機が必要になるという可能性は当然ある」と述べ、医療機関などに現在設置されているカードリーダーが使えなくなる可能性に言及した。立憲民主党の長妻昭議員の質問に答えた。
河野デジタル相は「2026年から新しいカードを導入しようと思っている。技術革新を踏まえ、より強い暗号に切り替える。最初の発行から10年経ち、カードを更新する際に新しいカードに切り替えようと思っているので、順次新しいカードが世の中に出回る」と説明した。

莫大な補助金を投入して医療機関に導入させたカードリーダーを、3年後に入れ替えるのでしょうか?
コスト意識の無さには呆れます。
いったい費用対効果をどう考えているのでしょう?
この際、マイナ保険証が本当に必要かどうか、再検討したほうがいいのではないでしょうか。

 
そもそも、従来の保険証の課題は、不正使用や過誤請求と言われています。
年間600万件とか1000億円といった数字をSNSなどでも見かけますが、その出所はこの研究のようです。

厚生労働科学研究成果データベース
保険証認証のためのデータ交換基準に関する研究

保険情報の誤りや不正使用は、全国で年間600万件にも上っており、その処理のための経費は1000億円を越えると推定されている。

保険証認証のためのデータ交換基準に関する研究

保険情報の誤りや不正使用は、全国で年間600万件にも上っており、その処理のための経費は1000億円を越えると推定されている。多くは単純な保険証の番号の間違いであるが、中には資格停止後の保険証の利用も少なくない。
これらの多くは、クレジットカード会社が行っているような、資格認証システムを導入すれば解決する。

外国人の不正利用の懸念もあるようですが、実態は不明のようです。

朝日新聞(2018/12/15)
外国人の国保利用、調査強化へ 不正事例は未確認でも…

外国人による国民健康保険(国保)の不正利用に対する市区町村の調査権限を強化するため、厚生労働省は来年の通常国会への国民健康保険法改正案の提出をめざす。外国人の受け入れ拡大に備え、自民党から不正利用対策を強めるよう求められたことへの対応。ただ、厚労省が14日に公表した実態調査で、外国人の不正が確認された事例はなかった。

 
なりすまし等の不正利用も対策は必要だと思いますが、それより圧倒的に多いのが、保険証の番号の転記ミスや資格の確認不足だそうです。

そして、その対策を厚労省はやろうとしていました。


医療保険の資格確認における公的個人認証サービスの活用に関する考察



医療保険被保険者資格確認検討会の取りまとめについて


厚労省(H18/12/4)

保険証にQRコードを付けて、医療機関でQRコードを読み取って、オンラインで資格確認をするという方法です。
これで資格過誤のレセプト返戻を9割削減できる見込みでした。

健保組合も導入を期待していたようですが、突然、白紙撤回になったそうです。

健康保険組合連合会大阪連合会
広報誌「かけはし」(2007/8)

こうした資格過誤によるレセプト返戻の解消を図るため、厚労省は20年度以降に被保険者証をカード化する保険者に対し、カードにQRコードを装着させることを予定していた。
しかし突然、7月6日、厚労省から健保連へ、最近の「社会保障カード(仮称)」という動きのなかで、QRコード化について中止の申し入れがあった。
資格過誤によるレセプト返戻の解消が大いに期待されていたが、白紙撤回となった。

当時何があったのか、探してみると、ありました。

社会保障カード(仮称)に関する議論の経緯

平成19年7月5日
「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」(政府・与党)
Ⅲ 新たな年金記録管理システムの構築
1.新たな年金記録管理システムの導入【平成23年度中を目途】
2.「社会保障カード」(仮称)の導入【平成23年度中を目途】
 銀行通帳のような方式ではなく、個人情報を保護する観点から記載内容が他人に見られないよう十分なセキュリティ確保を行った上で、1 人 1 枚の「社会保障カード」(仮称)を導入する。
 また、このカードは年金手帳だけでなく、健康保険証、更には介護保険証の役割を果たす。

消えた年金問題の対策のために、新たなシステムとカードの導入です。

この時は社会保障に限定したカードだったようです。


資料5 社会保障カード(仮称)の基本的な構想に関する報告書のポイント

そして、住基カードと一体化の話が出てきます。

社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(2008/10/28)

第8章 関連しうる他の仕組み等の活用のための課題
費用対効果を高めるといった観点からは、社会保障カード(仮称)で必要とするICチップを含む媒体や認証基盤、医療機関等におけるネットワーク基盤等につき、関連しうる他の仕組み等を可能な限り活用することで、社会保障カード(仮称)のためだけに新たな投資を行うことを極力避けることが重要である。

(1)既存のICカード・ICチップを含む媒体の利用
①住民基本台帳カード
平成20年6月11日にIT戦略本部でとりまとめられた「IT政策ロードマップ」においては、「住民基本台帳カードの普及にあたっては、社会保障カード(仮称)の議論と一体的に検討を進める」とされているところであり、今後更に検討を進めていく必要がある。

経団連も意見を出しています。

「重点計画-2008」に関する意見

「社会保障カード(仮称)の検討にあたっては、住民基本台帳カード及び公的個人認証サービスの普及に関する検討と一体的に進める」とあるが、電子私書箱(仮称)もこれらのカードと密接な関連の下、1つの電子政府基盤を成すものであるため、一体的に検討する体制を早急に整備するとともに、官と民の役割分担についても早期に方向性を明確化する必要がある。
その際、将来的には利用者にとって魅力あるサービスが提供できるよう、電子マネー等の既存の民間サービスとの連携も視野に入れた検討を行うべきである。

こうして、今のマイナンバーとマイナンバーカードの方向性が決まっていき、その中に保険証も取り込まれていったようです。

元々保険証で必要なのはQRコードとオンライン資格確認だったのが、社会保障カードになり、住基カードと一体化し、どんどん複雑で使いにくくなっていったのが、今のマイナ保険証だと思います。
経済界からの圧力もあったのでしょう。

 
一方、経緯はよく分からないのですが、保険証にQRコードを搭載する動きもあります。
協会けんぽは2015年からQRコードの搭載を始めています。


協会けんぽ

他の保険組合でも、QRコードの搭載を始めているようです。

気になるのは、QRコードを搭載する目的です。
協会けんぽのチラシでは、わざわざ「協会けんぽ以外で二次元コードから保険証の情報が読み取れるものではありません」などと書いてあります。

「読み取れるものではありません」
読もうと思えば読めるけど、読んではいけない?
どうも違和感のある書き方です。

もしかして、今は医療期間で保険証のQRコードを読み取ってはいけないことになっている?
マイナ保険証を推進するために、政府が規制をかけている?
あり得る話だとは思いますが・・

おそらく、技術的には、そのままオンライン資格確認にも使えるのではないでしょうか。
と、いうことは、
すでにオンライン資格確認のシステムは稼働しているので、保険証のQRコードを解禁すれば、マイナ保険証がなくても、従来の保険証の問題の9割は解消できる。
ということになるのではないでしょうか。

 
今までマイナ保険証のメリットと言われていたものは、ことごとく崩壊しています。
顔認証は使い物にならない。
暗証番号は使いまわしができる。
従来の保険証より職員の手間がかかる。

3年後に新カードを導入して、カードリーダーの入れ替えが必要かもしれないという話は、どこのメーカーから言われたのか知りませんが、政府はカモにされているのではないでしょうか。

従来の保険証を廃止してマイナ保険証に一本化してしまったら、品質の悪いカードリーダーを使わざるを得なくなり、さらに新しいカードリーダーが出る度に買わされることになりそうです。

 
もう、マイナ保険証は廃止して、従来の保険証を廃止しないでQRコードでオンライン資格確認すればいいのではないでしょうか・・