能登半島地震、輪島市のビル倒壊

耐震補強したビルでも、こうなる可能性があるということだと思います。

日経XTECH(2024/1/16)
輪島市の転倒ビルに杭引き抜けの痕跡、下部構造が破壊か

能登半島地震で震度6強の揺れを観測した石川県輪島市。市の中心部では鉄筋コンクリート(RC)造の7階建てビルが転倒、近隣に立っていた木造3階建ての店舗兼住宅を押しつぶすという、極めて異例な被害が出た。

転倒したのは、漆器の製造販売を営む企業のビルだ。この企業のWebサイトによると、大正期に創業し、業容拡大を受けて1972年に法人登記、同年に工場兼店舗として地下1階・地上7階建てのこのビルを建設した。

横倒しになった建物を南側から見ると、ビルは上部構造の原形をほぼ保ったまま、4階まで地下にもぐり込んでいた。
西側に回り込むと基礎底面があらわに。基礎梁(はり)がひび割れ、内部の鉄筋が露出していた。
フーチング裏面に杭の痕跡である丸いくぼみがあったが、杭はついておらず引き抜けたと見られる。
ビルが立っていた敷地は土で埋まっており、杭の存在は目視で確認できなかった。

東京大学地震研究所が24年1月8日付で公表した「2024年能登半島地震被害調査速報」によると、転倒したビル内部の柱は巻き立て補強されていた可能性がある。調査速報は転倒について、次のように記している。
「圧縮側をみると、地面の下までめり込んでいる。建物の地下部にも構造物があり、上部構造の圧縮側では地下部で破壊が生じて、それが建物の転倒を助長したと思われる。建物は耐震補強されたとの情報もある。 1階を見る限り、転倒した方向にはあまり壁は存在しない」


 

 

読売新聞(2024/1/9)
輪島の倒壊ビル、土台が地中の杭から抜けたか…東大教授「同様の被害は阪神大震災で見て以来」


 
楠教授が、国内の地震でこうした被害を見たのは1995年の阪神大震災以来という。倒壊した理由については「断定できる段階ではない」と前置きした上で、「ビルが、縦横に激しく揺さぶられて西側の杭が土台から抜けて東側に傾いた。さらに東側の地下構造でも何らかの損傷が起きたことで、そのまま横倒しになった」とみる。

同市中心部ではこれ以外にも、おおむね築50年以上のRC造のビル5棟(3~7階建て)で0・4~4度の傾きが生じていた。4度では1メートルで約7センチの高低差が出る計算で、めまいや吐き気などの健康被害が生じる恐れもある。柱や壁の外観には大きな損傷は見られず、楠教授は「地中の杭が破壊されている可能性が高い」と語る。

現場周辺は海や川に近く、液状化の痕跡もあった。楠教授は「RC造のビルで多数の被害が出た要因には、こうした軟弱な地盤も背景にあるだろう」と話した。

倒壊(転倒)したビルの写真を見ると、いかにも地面が液体のようになって、倒れたビルが沈下したように見えます。
ビルの周辺には液状化の痕跡もあるようですが、このビルの倒壊は液状化の影響もありそうです。

ビル直下の軟弱地盤が液状化によってさらに強度がなくなって、杭が折れたり倒れたりしたら、その上のビルは簡単に倒壊(転倒)しそうです。


鹿島 耐震診断・耐震補強

 
検索したら出てきた資料ですが、
実務のための耐震診断マニュアル という資料によると、耐震診断の対象は基本的に地上部分で、基礎部分は診断の対象になっていないようです。

東京都都市整備局が出しているビル・マンションの耐震化読本 は、地上部分の耐震性の向上についてはいろいろ取り上げていますが、基礎の耐震性に関することは出てきません。

今回倒壊した輪島市のビルは耐震補強を行っていたようですが、これまで、ビルの基礎部分の耐震性は見過ごしてきた(無視してきた)ということでしょうか?

もしそうだとしたら、「耐震補強が完了した」ビルでも全く安心はできないと思います。
 

東京都は湾岸エリアと山手線より東側に液状化リスクの高い地域が広がっています。


東京の液状化予測図 令和3年度改訂版

首都直下地震が起きたらどうなってしまうのでしょう・・