データセンターの莫大な電力消費

“AI"という単語を聞かない日はない今日この頃ですが、こういう話は気になります。

日経XTECH(2024/3/8)
GAFAの「黒子」が明かすAIデータセンターの想像を絶する未来、印西NRT12で聞いた

近い将来、生成AI(人工知能)用のITインフラストラクチャーは「8ラックで1.4メガワット(MW)もの電力を消費するようになる」。そう予測するのは、大手データセンター事業者である米Digital Realty Trust(デジタル・リアルティ・トラスト)のChris Sharp(クリス・シャープ)CTO(最高技術責任者)だ。

1ラック当たり最大70kWの電力供給が可能
千葉ニュータウン中央駅から歩いて15分ほどの距離に位置するNRT12は、延べ床面積2万7571平方メートル、IT用の電源容量34MWで最大4000本のサーバーラックを収容できる大型データセンターだ。


 
NRT12の特徴は、AI用GPUサーバーを「超高密度運用」できる点だ。シャープCTOはNRT12においては、1ラック当たり最大70キロワット(kW)の電力を利用できると明かす。

1ラック70kWという電力容量についてシャープCTOは、NVIDIAの最新GPUサーバーであるDGX H100を4台稼働できる能力があると説明する。

“DGX H100"の外観はこんな感じですが、データシートにはシステム消費電力が最大10.2kWと記載されています。


NVIDIA DGX H100

これを1ラックに4台ずつ搭載して、このようにずらっと並べて使用するようです。


NVIDIA DGX H100

NRT12の1ラック当たりの電力容量は最大70キロワットで、NRT12全体では34メガワット(=34000kW)だそうです。
一般家庭1世帯の容量を3kWとすると、約1万1千世帯分の容量になります。
改めて、データセンターは莫大な電力を消費することが分かります。

印西市全体のデータセンターを合わせると、500メガワットを超えるようです。
印西市のデータセンターがフル稼働した時の年間電力消費量は、一般家庭108万世帯分だそうです。

日本経済新聞(2022/3/17)
データセンター林立、千葉・印西外資呼ぶ情報城下町

千葉県北部に位置する印西市。
東京のベッドタウンとして発展してきたファミリー層に人気のニュータウンエリアが、データセンター(DC)の一大集積地としてIT業界で存在感を高めている。


 
データセンターの規模は最大受電容量の大きさで表現することが多いが、その合計は公表値で535メガワット。1年間のフル稼働を仮定すると一般家庭108万世帯の年間電気消費量に相当する。


 
大きな電力を消費するデータセンターの急増で課題となるのは電力供給量だ。東京電力パワーグリッドは、印西地区に現在の約3倍の供給を想定。新京葉変電所から千葉印西変電所をつなぐ全長約10キロの電力ケーブル用とう道の掘削を急ぐ。

 
また、東京電力が建設中の変電所の容量は最大1000MW(=100万kW)だそうです。
つまり、原発約1機分の容量です。

日経XTECH(2023/12/19)
日本最大級のデータセンター14棟計画、大和ハウスが「DPDC印西パーク」公開

電力供給については、大和ハウスが取得した敷地がある工業団地に大規模な変電所を誘致できた。東京電力ホールディングス傘下で、送配電事業を担う東京電力パワーグリッド(東京・千代田)だ。
同社は最大1000MWの電力を供給できる超高圧変電所「千葉印西変電所」を新設中で、送電線などが通る洞道の建設現場をメディアに公開した。24年10月から、DPDC印西パークに電力供給を開始する予定だ。

 
最近、柏崎刈羽原発に関する報道が増えてきたような気がしますが、データセンターの誘致も無関係ではないのではないでしょうか。

朝日新聞(2024/3/6)
原発再稼働を市民と議論 「条件付き容認」の柏崎市長、環境整備狙う

東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働をめぐり、原発が立地する柏崎市の桜井雅浩市長は5日、自ら市民と直接対話する「地域懇談会」を開催することを明らかにした。

TBS NEWS DIG (2024/3/7)
柏崎刈羽原発の再稼働求める請願 刈羽村議会の委員会で審査 賛成多数で採択

東京電力 柏崎刈羽原発の早期再稼働を求めて、新潟県の刈羽村議会に提出された請願について、7日の委員会で審査が行われ、賛成多数で採択されました。

地震リスクの高い日本で、危険なゴミが溜まる一方の原発に依存するのは、あまりにも浅はかだと思うのですが・・

 
ちなみに、2023年は全国で太陽光と風力の電力を約45万世帯分、無駄にした(出力制御した)ようです。

朝日新聞(2024/2/10)
「捨てた」再エネ電気、45万世帯分 出力制御急増で 朝日新聞集計

太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が2023年に急増し、1年間に制御された電力量が全国で計約19・2億キロワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。過去最多だった21年の3倍超で、約45万世帯分の年間消費電力量に相当する。

海外では、すでにギガワット級の蓄電池を導入する動きがあります。
日本も本気で蓄電池(系統用蓄電池)の導入を進めれば、膨大な再エネ電力を無駄にせずに済むのではないでしょうか。

日経XTECH(2024/3/8)
米最大1.3GWの「太陽光+蓄電池」稼働、今後3GW超に増設へ

太陽光発電で米国をリードするカリフォルニア州で、米国最大の太陽光発電と大規模なエネルギー貯蔵プロジェクトが商業運転を開始した。
「エドワーズ&サンボーン・ソーラー・エネルギー貯蔵」と呼ばれるこのプロジェクトは、太陽光パネルの出力が875MWに達するメガソーラー(大規模太陽光発電所)と容量3282MWh(3.282GWh)もの「ギガストレージ」から構成される。

日経XTECH(2024/3/7)
「ギガソーラー」に蓄電池を併設、中国BYDが供給

スペインの再生可能エネルギー事業者であるグレナジー(Grenergy)と中国BYDは1月12日、グレナジーがチリのアタカマ砂漠で進めている世界最大級の蓄電池併設型メガソーラー(大規模太陽光発電所)・プロジェクト「アタカマのオアシス(Oasis de Atacama)」において、BYDが蓄電池システム(Energy Storage System =ESS)を供給すると発表した。
同プロジェクトでは、出力1GWの太陽光発電と容量4.1GWhの蓄電池システムを建設する。最初のフェーズは2024年、第2フェーズは2025年までの運転開始を予定している。

 
「エネルギー安全保障がー」と言いながら、膨大な再エネ電力を無駄にしている日本。
「巨大地震のリスクがー」と言いながら、原発にさらに依存しようとする日本。
「食料安全保障がー」と言いながら、膨大な食品ロスを出している日本。

いつまで日本はそんなことをやっているのでしょう・・