日銀のマイナス金利解除、本当の目的は何だ?

植田日銀総裁の説明に納得している人はどれだけいるのでしょう?

NHK NEWS WEB (2024/3/19)
日銀 植田総裁「大規模金融緩和策は役割果たした」


 
植田総裁は「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでのイールドカーブ・コントロール、およびマイナス金利政策といった、大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」と述べました。

その判断の理由について植田総裁は「春闘での賃金の妥結状況は重要な判断のポイントの1つであるので、実際その通りに判断の大きな材料にした。大企業の賃金の動向をみると、中小企業は少し弱いということはあっても全体としてはある程度の姿になるのではないかということで今回の判断に至った」と述べました。

中小企業の賃上げ「ヒアリング先の半分以上 賃上げ計画」
植田総裁は中小企業の賃上げの広がりをどのように判断したのかについて「今回は、短観で調査している中堅・中小企業よりも、さらに小さい事業者も含めてヒアリングを実施した。その結果、ヒアリング先の半分以上の所から賃上げの計画があるという回答を得たということも1つの情報になった」と述べました。
そのうえで「特に小規模の企業はなかなか賃金を上げるのは大変なところも多いことは認識しているが、小規模企業は、全体あるいは大企業がどういう賃金設定をしていくかということを見つつ自分たちの賃金設定も決めていくという傾向がある。その点も加味して今後の中小企業の賃金の動向を予想した」と述べました。

日銀は、そんな表面的な話だけで、政策を決めているのでしょうか。
日銀がヒアリングした「中堅・中小企業よりも、さらに小さい事業者」というのは、どういう会社で何社なのかよく分かりませんが、それらの会社に「賃上げの計画がある」ということが判断材料になったようです。

なぜ中小企業が賃上げするのか、その理由はどうでもいいのでしょうか?
もしかして、儲かっているから賃上げするとでも思っているのでしょうか?
 

それにしても、最近のマスコミの過剰なまでの賃上げ報道に違和感を感じたのは、私だけでしょうか。

TBS NEWS DIG (2024/3/15)
「賃上げ率」第1回集計平均“5.28%” 33年ぶり高水準 2024年春闘について「連合」が発表

まるで大企業とマスコミが事前に示し合わせたような、賃上げキャンペーンを展開しているように見えます。

おそらく、事前に示し合わせたのでしょう。

そもそも、日銀は何のためにマイナス金利を解除するのか、現状維持では何が問題なのか、具体的には言っていないと思います。

植田総裁が気分的にアベノミクスを辞めたいといった事はあるのかもしれませんが、そんな事だけで決められる話ではないでしょう。

もし、植田総裁の説明は全て後付けの言い訳で、政策金利を上げていくことが目的だとしたら、納得できる気がします。

日銀がマイナス金利を解除して政策金利を上げる目的は、いくつかありそうです。

1つは、金融機関の利益を増やすため。

野村総合研究所(2024/3/19)
日銀がマイナス金利政策解除で17年ぶりの利上げ

階層型の日銀当座預金制度廃止によって、金融機関が日銀当座預金から得られる利子所得は、年間2500億円程度増加すると試算される。

読売新聞(2023/12/6)
地方銀行決算 経営努力を問われる金利上昇

地銀はこれまで、低金利による運用難や資金需要の低迷を受け、高利回りが期待できる外国債券での運用を増やしてきた。日本国債など国内債券の保有も多い。
金利が上昇すれば、債券価格は下落する。取得時の価格を下回ると、銀行が持つ債券に含み損が生じる。債券を早めに売却し、含み損を処理したことなどに伴い、業績が押し下げられたという。

一方、金利が上がると融資の利ざやが増え、本業には追い風ともなる。各地銀は、本格的な金利上昇に備える段階を迎えている。

債券の含み損を処理した後は、マイナス金利解除と金利の上昇は銀行の経営にプラスになるはずです。
金融機関の関係者が政府や自民党に陳情した可能性が考えられます。

 
政策金利を上げるもう1つの目的は、人材の流動化の促進。

少子高齢化の日本では、企業の人手不足は喫緊の課題です。

PR TIMES(2024/2/26)
正社員の人手不足は52.6% 「2024年問題」の建設・物流・医療業では約7割

2023年の人手不足を要因とした倒産は260件にのぼり過去最多を大幅に更新し、人手不足による企業経営への悪影響が顕著にみられた一年だった。物価上昇にともない活発となった「賃上げ」は人材の確保・定着には欠かせない手段であるなか、いわゆる「年収の壁」問題から結果的に総労働時間の制約が指摘されるなど、課題は山積している。

人手不足だから賃上げが必要というのは、その通りだと思いますが、春闘でみんな揃って満額回答を出すのは、事前の示し合わせがあった可能性があります。
そして、日銀の政策金利の見直しをお膳立てするために、大企業とマスコミが賃上げキャンペーンを展開したのではないでしょうか。

賃上げできない企業の従業員は、賃上げできる企業に転職する可能性が高まります。
賃上げできない企業は必要な業務ができなくなって、淘汰されてしまうかもしれません。
金利の上昇は、そのような企業にさらなるプレッシャーを与えることになります。

DIAMOND online (2024/2/10)
「利上げは経営者に『現状維持』許さない好機」デービット・アトキンソン氏が語る金利復活の“効能”

「利上げは企業の現状維持が難しくなり、経営者にイノベーションを進めさせるプレッシャーをかけることになる」

円安と物価高が追い風になっている大企業は、多少の金利上昇くらい、痛くも痒くもないでしょう。
利上げは、中小企業の淘汰が進んで、優秀な人材を獲得できるチャンスと考えているのではないでしょうか。

 
また、預金金利の上昇は、政府にとっても都合がいい可能性があります。

REUTERS(2024/3/19)
大手行が預金金利引き上げへ、三菱UFJ銀は21日から 日銀利上げで

三菱UFJ銀行は19日、日銀の利上げを受けて普通預金金利を0.001%から0.02%に引き上げると発表した。
定期預金の利率も見直し、1年物は0.002%から0.025%とする。
三井住友銀行も普通預金金利を年0.02%(従来は年0.001%)に引き上げ、4月1日から適用する。

0.02%ということは、100万円で200円なので、まだまだしょぼいですが、今までと比べれば20倍です。
今後さらに金利が上がっていく可能性も考えれば、タンス預金のお金を銀行に預ける理由付けになりそうです。

政府は今、国民の金融資産の把握に力を入れていると思われます。

日本経済新聞(2023/12/5)
高齢者の社会保障負担、金融資産を加味検討 政府改革案

政府が5日に公表した社会保障改革の工程の素案には、金融資産や所得を加味して高齢者らの負担を検討する項目が盛り込まれた。年金などの収入が少なくても、多額の資産を持つ高齢者に一定の負担をしてもらう考え方だ。

日本国民のタンス預金は60~100兆円位あるそうです。
政府にとって無視できる金額ではないでしょう。
タンス預金を金融機関の口座に入れさせて、政府が把握できるようにする必要があります。

政府は預金金利の上昇と7月の新札導入の合わせ技で、タンス預金の撲滅を目指しているかもしれません。

 
いずれにせよ、日銀のゼロ金利解除と政策金利上昇は、円安・物価高の波に乗って儲かっている人を除いて、多くの庶民にはほとんど恩恵はなく、むしろ生活が厳しくなる可能性があると思います。

植田総裁の言う「賃金と物価の好循環」は、本当に実現するのでしょうか。
賃金が上がると、税金も社会保険料も上がります。
賃金が上がると、控除や手当が減る可能性があります。
企業が賃上げした分は、売値に転嫁される可能性があるので、さらに物価が上がる方向になります。
企業の借入金利の上昇分も、売値に転嫁される可能性があります。
「賃金と物価の悪循環」ではないでしょうか。

日銀が政策金利を見直すと、円高になるという話もありましたが、逆に円安が進行しています。

TBS NEWS DIG (2024/3/20)
円安進行 1ドル=151円34銭 4か月ぶり水準 日米「金利差」開いた状態が続くとみられ円を売る動き進む

日銀はきのう、マイナス金利の解除を決めましたが、植田総裁が「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と発言したことで、今後も日米の金利差が開いた状態が続くとの見方が強まり、円を売って、ドルを買う動きが進みました。

庶民の暮らしは厳しくなる一方です・・